出雲と大和というデカいテーマの展覧会。
2020年は日本書紀成立1300年とのことです。その記念の特別展だそうです。
圧倒。
見るべきもの、あるいは見て冥土のみやげになったものが、たくさんありました。
そして、単に見て良かったなあ、ではなく、情報量としても膨大。
また、展示物の数としても大量。私が行った時は待ち時間も混雑もなかったので、時間をかけてみることができましたが、とりあえずのみ込むのが精一杯でした。
つまり、現場の展示会場では「スゲー、スゲー」と驚いて、感心して、おしまいなのです。
といっても、「スゲー、スゲー」ポイントをおすすめして、行ってもらおうというのがこの記事の主旨になります。
私テキな見所のご紹介です。
まず、最初に目に入ります。
昔の出雲大社を支えていた柱です。
今も、出雲大社の境内にはこの柱の場所に円が書かれていて、その大きさを想像できるのですが、実際に見ると、やはり大きいです。
心御柱と宇豆柱を見て「この柱を使ったお宮って、どんな大きさだったんだろう」と思っている目の先に、出雲大社の本殿模型があります。
1/10模型。
恐ろしく高い階段が続いた先にお宮があります。
私は大祓詞(おおはらいのことば)を思いだしました。大祓詞というのは、祝詞のひとつ。
そのなかに、「高天原に千木高知りて」(たかあまはらにちぎたかしりて)とあります。
高天原というのは、神さまのおられる天の場所。そこに届くほどのお社をたてました、ということですけど。
「千木高く」ってマジ、高いです。
やはりこの特別展は「日本書紀1300年」の企画なので、日本書紀は見ておきたい。
この日本書紀は、前期と後期では展示替えがありますが、いずれも西暦1300年代のものです。
杵築大社というのは出雲大社のことです。
神殿の内部の天上に書かれた鮮やかな雲。八雲といってるのに、実際は雲は7つ。
2007年の平成の大遷宮の時に公開されたのを憶えています。
たくさんの銅鐸と銅剣が出土して、学術的価値が高いという「知識」として知っていたけれど、実際にみるとこの物量がすごい。
(撮影オッケーなところ)
銅鐸はこのように入れ子になって出土したので、あきらかに意識されて埋められている。それにしても、この集めた量は、なにか一種の恐れ、強迫観念を感じます。
その後、四隅突出型墳丘墓が造られるようになって、王の埋葬と交替の儀式がこの墓でなされたとされています。
王という命をつなぐためには、前の王は完全に死者となっている必要があり、今の王にそのパワーが引き継がれる間に魔がはいらないように威儀をただすものが必要なんだな。
出雲での銅剣、銅鐸に対して、大和は鏡。
奈良の黒塚古墳展示館で復元模型をみたことがあるのですが、鏡とともに、棺の周囲の朱の赤が印象的でした。
この鏡も被葬者とともに埋葬されていたのだですが、この鏡の量もすごい。
災いを避けるためのもの、と説明書にあった(と記憶している)のですけど、出雲の剣にしても大和の鏡にしても、その災いというのは、なんだろうかと考えていました。
外部からやってくる災いから、この埋葬者を守るためだろうか。
あるいは、この埋葬者が、よみがえって災いをなさないためのものじゃないか。
石上神宮のご神宝。
そもそも、アヤシいブログなので書いてしまうと、この刀独得の重い響きが素晴らしいのです。
大和の銅鏡は涼やかな音がするし、出雲大社に奉納された日本刀は高い響きをもっていると思うのです。
それに比較して、太鼓のような力強い響きがこの刀にあると思うのです。
七支刀は、以前も見たことがあって、また、見ることができるとは思いませんでした。有り難いことです。
これは展示ではなく、ビデオで説明されていたのですが、出雲の国造(その地方の豪族)が天皇の前で、神宝を献上し、祝詞を奏上するという儀式の説明です。
そのなかで、奏上される祝詞は「出雲の国造の祖先神アメノホヒとアメノヒトナリが高天原のタカムスヒの命令でこの地に天下ってオオナムチを鎮めたこと。それを受けてオオナムチは、和魂(ニギミタマ)を三輪山へ、三柱の御子神を葛城と雲梯(うなて)と飛鳥に鎮座させて、自身は杵築宮に鎮まった」とあるそうです。
この展示のサブタイトルに出雲は「幽(ゆう)」つまり霊的な世界を、大和は「顕(げん)」つまり政治を、それぞれ司ったとありましたが、これは納得できるものがありました。
いままでは、出雲から大和という時間の流れだったり、出雲と大和の勢力争いということで、この出雲と大和を考えていたのです。
でも、こうした「幽と顕」という世界の棲み分け、あるいは共存、協力という面でみることができるのです。
オオナムチの和魂がおられるのは、大神神社(おおみわじんじゃ)です。
御子神のおられるお宮のうち、雲梯の宮は、川俣神社らしい。
葛城の宮は、高鴨神社。飛鳥の宮は、加夜奈留美命神社(かやなるみのみことじんじゃ)とされているらしいのです。ちなみに、飛鳥の神奈備山はその後、鳥形山になって神社も飛鳥坐神社になったそうですが、本霊はもとの神社におられうそうです。
もう、このあたりで情報多すぎなのですが、あとは美しい日本刀、玉、ガラス、埴輪。
それから仏像多数。
それぞれのお宮がいまは、どこのお宮のになっているのかなと思った延喜式の神名帳。
おなかいっぱい。
最後の展示は焼失してしまった法隆寺金堂の壁画。
黒い柱は火災のあとを思わせます。
(撮影オッケーなところです)
失ったものも確かに多いけれど、私たちの手元にはまだ、たくさんのものが残っているわけで。
そうそう、ミュージアムショップの関連グッズも結構、カワイイものがたくさんありました。
そのあと、翌日が公開最終日だった「高御座と御帳台」の展示へ。
展示はガラス越しだったのですが、センサー付きの入口を通りました。なんのセンサーかな?
こちらは撮影オッケーだったので、たくさんの人がスマホで写真を撮っていました。
高御座は天皇陛下が、御帳台は皇后陛下がおあがりになって即位の宣明をされたところです。
しつらえや大きさに違いがありますが、それぞれ、神々しいばかりに美しく、権威があります。
思わず柏手をうって手をあわせてしまいました。
ミュージアムショップにあった「宮廷の年中行事」
絵本のように表紙がしっかりしていて、美しい。これは年間を通してあると思います。
高御座と御帳台の特別展示は、終了しています。
国立博物館特別公開「高御座と御帳台」
出雲から大和、そこから東京に至るまでの古くて、でも新しいもの。
それから、人間をこえる力に対する畏れと、それでもそこに向かい敬い、祈っていく気持ち。
たまたまですが、この二つの展示をあわせて見ることができたのは、大変、幸福でした。
質、量ともに圧倒される展示でした。おすすめします。
1月30日 18時30分から、ニコニコ動画で「特別展「出雲と大和」を原武史、河野正訓研究員の解説付きで巡る生放送 於 東京国立博物館 平成館《ニコ美》」が配信されます。
2020年1月15日(水)から3月8日(日)東京国立博物館で
(2月26日(水)で急遽閉幕となりました)
東京国立博物舘ブログ 出雲と大和