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シン・ゴジラ ゴジラの恩返し

(以下、ネタバレあります)

シン・ゴジラの「シン」については、いろいろ言われているけど、ここでは、神をあてたいと思います。
英語表記は、「Godzilla Resurgence」(ゴジラ復活)
つまらないこと、このうえないのですが、一方、英語表記は、時々、別の真実も伝えていて、そこには、God が含まれていると、ストーリーのなかでも語られます。

そして、この話も、「Resurgence」(復活)から始まります。

最初は、東京湾に置き去りにされたプレジャーボートから。そこに残された、牧教授のメモと靴。
そのプレジャーボートは「グローリー丸」。初代ゴジラの最初にでてくるのが「栄光丸」
これは、初代ゴジラの最後の場面であり、そこからの「復活」のストーリーである事を示しています。

初代ゴジラは、海底に潜んでいたジュラ紀の怪獣「ゴジラ」が水爆実験で安住の地を追われ、東京に上陸するというストーリー。
当時は、まだ戦後ともいえる時代で、太平洋戦争や、広島や長崎の原爆の記憶もある昭和29年(1954年)初代ゴジラの最後、芹沢博士はゴジラのもとに潜って、オキシジェン・デストロイヤーを作動させます。
これによって、初代ゴジラは消滅するのですが、その後、芹沢博士は、オキシジェン・デストロイヤーが悪用されるのを恐れ、その秘密とゴジラとともに、海中に消えていきます。
その芹沢博士は、戦争で片目を失っています。
昭和29年は(1954年)は、第五福竜丸のビキニ環礁での水爆実験による被爆もあった一方、原子力発電所の導入をすすめていた時期。
当時は、原子力は、夢のエネルギーと言われていたけど、戦争の記憶もまだ、残っていて、原爆、原子力の恐ろしさが、また、やってくる、と感じる時代でもありました。

その海中に没した芹沢博士にかわって、シン・ゴジラでは、牧教授は芹沢教授の後を追うようにボートから消えているところから、「復活」のストーリーが、始まります。

この牧教授は、最後まで行方不明なのだけど、初代ゴジラのラストを考えると、牧教授は、ゴジラとともに海中に沈んだように思えます。
少なくとも、そう思ってほしい、と感じます。
それは、そろえた靴が、わかりやすい飛び込み自殺者を示すように、つまり、死んだものと思ってほしい、というメッセージを発していると読めるのです。
それにしては、わかりにくい遺書のメモと「好きにしろ」という謎の遺言が、残っているのが、屈折しています。
死んだものと思ってほしい、というなら、もっとわかりやすく残せ、と思います。
わかるヤツだけ、わかればいい、「好きにしろ」というのは、牧教授の気持ちなのかもしれませんが、そこが、庵野監督らしさ、とも思います。

さらに、わかりにくいのは、その牧教授は、祖国日本に裏切られたというのに、わざわざ、日本に帰国していることです。
嫌いな日本なら、裏切られた日本なら、帰ってこなくていいのに。
でも、牧教授は、帰ってきています。ゴジラも復活します。
それは、牧教授の思いとシン・ゴジラが一体だからだと思います。

ラストシーンの人間にみえるシン・ゴジラのしっぽは、牧教授だ、と言われているけど、彼がシン・ゴジラと物理的に一体となった、とまでは思いません。
でも、彼の日本や、少なくても日本の体制に対する復讐心、あるいは、逆のベクトルに向かうほどの愛国心が、シン・ゴジラの「核 DNA」になっていると思います。

愛と憎しみは、似ています。
愛の反対は憎しみじゃない。無関心です。
愛しているがゆえに、思いが大きいから憎むのであって、
愛してなければ、どっちだっていいのです。
日本に裏切られ、シン・ゴジラの発現を予測していたらしい牧教授。
彼は、日本を救いたいと思ったのか、それとも、日本を破壊したい、と思ったのかはわかりません。
でも、「救いたいと思ったけど、できなかった」にせよ、「破壊したいと思った」にせよ、牧教授は、シン・ゴジラと相対しているはずで、牧教授の日本に対する「思い」が、シン・ゴジラを「襲来」させたのだと思います。

今回のシン・ゴジラは、海洋投棄された放射性廃棄物をエサにしていると、されています。
放射性廃棄物の海洋投棄は、1993年ロンドン会議で禁止されるまで、続けられており、何が捨てられているのか、わかりません。
でも、周囲からプルトニウムは検出されています。プルトニウムの半減期は2万4000年。とても長いのです。

それにしても、放射性廃棄物の海洋投棄を始めたのも、日本じゃないのに。
水爆実験は、被害をうけただけで、実施したのは日本じゃないのに。
東日本大震災のあとの福島第一原子力発電所の廃炉に必死なのに。
原爆による最初の核被爆国なのに。
なんで、こっち来るんだよ、ゴジラ。
日本に対する思いがあるなら、その発端をつくったアメリカに行けよ、と思ったけど、牧教授の思いとシン・ゴジラが一体だから、帰ってきたのです。

一方、この第4形態、立ち上がったシン・ゴジラの手は、サリドマイド薬害の被害者を思い出します。
サリドマイドは、妊婦でも安心して飲める薬として広まりましたが、その後、胎児への奇形という薬害を引き起こしました。
そして、サリドマイドは、一時、使われなくなったのですが、最近、効果が見直され多発性骨髄腫に使われ始めました。
このサリドマイドが発売されたのが1958年。初代ゴジラが1954年。
ここにも、「Resurgence」(復活)のイメージがあります。

また、シン・ゴジラの「中の人」(モーションキャプチャー)は、野村萬斎さん。
彼の最近の舞台に、「マクベス」があります。
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(世田谷パブリックシアターから)

過去、何度か上演され、海外でも評判の高かった舞台です。
マクベスは、仕える王を殺して王位に上りますが、最後は殺されるストーリー。
その冒頭、マクベスの将来を予言する、あるいは、将来に呪いをかける三人の魔女とマクベスは荒野で出会います。
最新のバージョンの舞台で、この三人の荒野の魔女は、黒いゴミ袋から登場していています。
福島第一の事故以降であれば、あのゴミ袋は、除染ででた放射性廃棄物が入っていることがすぐわかる、あの大きさと色、かたちのゴミ袋でした。
放射性廃棄物から「復活」する魔女たち。
また、その放射性廃棄物というモティーフを用いた野村萬斎さんが、シン・ゴジラになっているのも象徴的です。

シン・ゴジラは、核融合による熱を血液で放散させているとされています。
なので、血液を凝固させ、熱放出を抑制するための血液凝固剤と、生体反応を阻害する極限環境微生物を合わせてシン・ゴジラに注入する作戦をとります。
注入するには、シン・ゴジラを横倒しにして、口から、クレーン車による血液凝固剤を注入します。
あのシーンは、福島第一の原子炉事故でみた、クレーンによる水の注入のままです。

その結果、シン・ゴジラは、凍結した状態で終わっています。

いくつもの原子力、復活というイメージが重なっています。

でも、シン・ゴジラが、破壊されたのではありません。
極限環境微生物が、どのくらいDNAに阻害を与えるかが、描かれていないのだけど、シン・ゴジラは、読み違えの多いゲノムをもっていると思われ、 さらに、そこらへんにまきちらした血液にもDNAは残っているはずなので、それが、ラストシーンの人間にみえる尾に表れたように、同時多発的に、異種が発生するす可能性が大きいと思います。

また、シン・ゴジラの放射性物質の崩壊熱の放散の問題もあります。
第一形態では、海水でその熱を冷却していたので、東京湾での水蒸気爆発を起こしました。
第二形態では、一部、川と海の水と、血液放出による冷却。
その後は、空気と、放射線ビームの放出による冷却。
血液循環を止めたといっても、
放射性物質の崩壊熱と、放射線の発生が止まったわけではないのです。
なので、あくまでも、これは一時的な凍結にすぎません。

このシン・ゴジラが凍結されたあとに、大きな原子炉が歩いているようなシン・ゴジラの中で作られた新しい放射性物質、あるいは放射性元素の半減期は、20日であると判明します。
つまり、シン・ゴジラによる放射線による汚染も2~3年で影響がなくなるとされています。
それによって、東京の復興も見通しがつく、というエンディングです。

これは、「福音(ふくいん)」。
シン・ゴジラという神 God の言葉、あるいは、これが牧教授の「思い」ではないでしょうか。

海洋投棄された放射性廃棄物が2万4000年だったのに対し、その放射性廃棄物をエサとするシン・ゴジラを経由すると、20日に短縮されるのです。
つまり、シン・ゴジラは、放射能除去装置を持って帰ってきたのです。

シン・ゴジラは、豊かな生活と引き替えに、放射性廃棄物の海洋投棄をしていた事や、いいかげんな管理をしていた福島第一原子力発電所への復讐ではなく、原子力を無害化する研究をしていた牧教授の思いをもって、放射能除去装置をもって、報告にきたのだと思います。
あるいは、牧教授が、神 god のような放射能除去装置をもらたした、ともいえます。

復活したシン・ゴジラは、今は、凍結し眠っていて、あるいは、次世代の異種の発生、復活 Resurgence を待っています。

Resurgence おかえり、ゴジラ。

シン・ゴジラと草薙の剣については、こちらの記事で。

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(公式サイトから)

シン・ゴジラ 公式サイト

シン・ゴジラ Blu-ray特別版3枚組

初代ゴジラ

マクベス 世田谷パブリックシアターのページは、こちら。

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