メール鑑定

阿・吽 (阿吽) 第四巻 ~約束と業

ハイライトは高尾山寺(神護寺)での天台法華講話の場面。

「阿頼耶識(あらやしき)」については、いろんな考えがあるし、
仏教や仏教哲学に理解のない私は、ここで書けないけれど、
高尾山寺(神護寺)での天台法華講話の場面では、リボンのような経典を仲だちとして
最澄と空海の「阿頼耶識」での出会いが描かれています。
美しいリボンのような、その経典は、実際は、言葉で埋め尽くされているはずです。
・・・最高の理解者を得た、という、この気持ちのよさは、わかるなぁ。
この官能的な喜びとともに、圧倒的な情報量が描かれています。

最澄は、文書を読むとき、言葉を追います。
丁寧に一文字、一文字を指で読んでいるようです。
彼は、一時、道具としての言葉の意味を失いかけたけれど、
結局は、「阿頼耶識」にアクセスするには、言葉を使うという方法を選んでいます。

空海は、文書をばっと広げて、目でシャッターをきるように読みます。
身体で言葉を読む。
彼にとっての言葉は、身体と心をつなぐもの。
身体が求める言葉を探して、到達したのが「阿頼耶識」であったようです。

こうして二人は別々の方法で、言葉に向かったのですが、
天台法華講話の場面では、
経文に書かれた言葉を介して、阿頼耶識にアクセスし、
そこで二人が出会うことになります。

言葉は、阿頼耶識、無意識を意識にするもの。
また、心と身体を結ぶもの。

でも、阿頼耶識にアクセスするという体験や、
他の巻に描かれているように、瞑想している者に、他者が感応することは、
普通の生活にはありえない異常な体験です。
一方、禅の修業では、そのような体験はわりとあるもので、
そのような体験を、悟りと勘ちがいする事のないように、
仏教では、いろいろな方法がとられています。
そのひとつの方法が、言葉にする、という方法だと思うのです。
異常な体験を、言葉にして、体系化して、着地するのです。
それがないと、単に、イッチャってる人になる。

その言葉は、また、名前にもなり、約束にもなります。

空海、という名前は、この世での彼の約束を表しています。

また、空海の言葉による、他者との約束は、希望です。
それは、男前に自分の身体を与えるという女神そのものの、丹生都比売(にうつひめ)と、交わされた約束。
また、命の次に大事な金を与える藤原喜娘(きじょう)と、交わされた約束。

この二つの約束は、重く熱い物語のなかでは、
坂上田村麻呂の登場とともに、希望の風を運んできます。
(この坂上田村麻呂も、死してなお、都を守る(守らされる)のだけどね。)

でも、この物語の重さと熱さのベイスにあるのは、女と業(ごう)。

女「の」業の最初の物語は、母と子の物語。
母と子の物語は、この巻だけでなく、最初から低くベイス音として流れています。
あらためて、読み通してみると、そこここに、母の愛と重さがあります。

そして、女「と」業。
この巻でも、えげつない美人や、血の怨念を背負った男が登場します。
肉体があるがゆえに、あるいは、ないがゆえに、いやでも視線をうばってしまう美しさ。
おかざきさんの描く美女の、エロさ、たくましさ、えげつなさ、カッコよさは、
おかざきさんの業を感じさせます。

藤原薬子(くすこ)は、肉体派の美女。
藤原喜娘は、肉体を、一部失った美女。
丹生都比売(にうつひめ)は、肉体を、与える美女。(文字通り、両手両足を与えるのです)

また、血の怨念をもった業を背負った者として、安殿(あて)親王が登場します。
扉の絵で、彼は後ろ向きで、魚を持って現れます。
魚は、人間の欲望、自分の生存本能を、最優先とする無意識を感じさせます。
また、タロットカードでも魚は登場します。それは、無意識をカタチにする言語の象徴。
さらに、初期キリスト教徒の象徴が、魚であったりするので、
イメージが重なります。

そして、空海は、幼名が「真魚」といいます。
この欲望や無意識を象徴する「魚」を、彼は名前に持っています。

業とは遠いように見える、主人公の最澄と空海の持つ業は、実はとても深いのです。
業というより、執着とか、こだわりとか、
あるいは目的と言えば、私達も必ず、もっているものと感じられると思います。

最澄は、人を世界を救いたいという業。
空海は、自分を満たすものを求める業。

最澄も空海も、それからその他の登場人物も、
さらに、私もあなたも、それぞれ業を持っているのです。
それをどう、消化、昇華させていくのかが、違うだけ。
誰もが、業を背負って、この世にあるのです。

最澄と空海は、その業ゆえに、唐に渡ることになりました。
この熱量をもって、どこまでいくことになるのでしょうか。

ついていきます。

いままでのお話については、それぞれの記事をご覧ください。

1巻はこちら。2巻はこちら。3巻はこちら。

阿・吽 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)


このブログ記事がお役に立ちましたら、こちらからのプレゼントも嬉しいです。

*この記事を書いた人について
 辰巳(たつみ)
 聖地を巡礼する占い師。西洋占星術とタロットを使います。
 メール鑑定と対面セッション、オンライン、電話での鑑定をしております。
 薬剤師。アロマ検定1級。
 日々の情報発信は、Twitterもフォローください。
 こちらです→ @divinus_jp https://twitter.com/divinus_jp
 このサイトでは、聖地と占いの記事を書いております。

*鑑定について
 メールと電話、対面、オンライン鑑定を行っています。 鑑定については、こちらで。
 対面鑑定のスケジュールは、こちらで。
スポンサーリンク