NHKの夕方の番組、「シブ5時」では、渋護寺お悩み相談をされている釈さんの、新しい対談本。
お悩み相談、もそうですが、釈さんのすごいところは、この「対談力」じゃないかと思うのです。
法事の席で聞くお坊さんの話も、上手だなあ、と思ってお聞きすることがあるのですが、あれは自分のペースで、自分の持ちネタをやってるようなものです。
それに対し、対談では、相手がどんな変化球を投げ込んでくるか、わかりません。
それを、いつも「あ、ハイハイ、それはですね」と軽くうけつつ、なんでも答えてしまわれます。
それでいて、相手の気持ちを外さず、しかも、その場にいる対話に参加していないオーディエンス、対談本の場合は、読み手、にも納得させる話になっていきます。
自分の興味だけを延々と話しているのでもなく、会話している二人だけが盛り上がっているわけでないのです。
そういえば、以前、ご紹介した「大阪のおばちゃん超訳 ブッダの言葉」も、大阪のおばちゃんたちに、ええこと言わはるブッダさんの言葉を、わかりやすく伝えていらしたし「仏教ではこう考えます」は、子どもから大人までの質問に答えていらっしゃいました。
また、さとりについての「教えて、お坊さん!「さとり」ってなんですか」も、対談集です。
この随縁つらつら対談は、「大乗」という浄土真宗の月刊誌に連載され、本願寺出版という浄土真宗の出版社から出されています。
普通にコンビニにある雑誌ではないので、なかなか目にする機会はないのですが、対談される方は、もちろん浄土真宗の門徒の方ばかりではありません。
池上 彰さん
大村 英昭さん
井上 雅彦さん
玉岡 かおるさん
みうら じゅんさん
香山 リカさん
西山 厚さん
駒澤 勝さん
杉本 節子さん
伊東 乾さん
篠原 ともえさん
二木 てるみさん
天岸 浄圓さん
みなさん、なかなかの個性派で、おもしろく読んでいるうちに、気がつくと仏教の真ん中、阿弥陀様の手のひらの上にいるのに気がつくようです。
小児科医の駒澤さんのお話によると、子どもの最期の場面で、あえて「死んでもいい」というサインを送ったお母さんがいたそうです。
「死ぬしか道のないものに生きろというのは、今の私たちのように生きるしか道のないものに死ねと言うのと同じくらい厳しい」
また、みうらさんは、「みんな自分のために真面目すぎて、自分の欲ばかり主張するようになりますからね。「僕(撲)滅運動」も自分にもっと不真面目でいようという運動です」と。
また、連載当時、末期のがんを闘病されていた大村さんの言葉は、重いものがあります。
こういった方々からの、直球や変化球をうまく受け止め、打ち返しているのが、釈さんだと思います。
まえがきに釈さんの「対談力」の秘密が、少し書いてありました。
「私は、対談本を読むのが好きです」
私は、そこから学ぶことにします。
そして、こちらは五木寛之さんとの対談本。
「70歳!」
こちらも、対談の力をよくわかる本。
五木さんの内面の奥にある、剣呑(けんのん)なものが、チラっと見えるもの、対談でひきだされたからでしょう。
また、この本は現代の宗教をざくっととらえるには、とてもわかりやすい内田樹さんとの「対談本」である、こちらの
「現代霊性論」
実は、大学の授業の書籍化なのですが、今回、再読してみました。
2010年当時の社会状況から、すでに、かなり変わってきていることを感じましたが、現代の宗教の概論として、あるいは、スピリチュアルについて、わかりやすく、おすすめできるものです。
スピリチュアルの回路は開いておくものですが、それに依存してはいけないのです。
対談の力は、シブ5時のお悩み相談でも発揮されています。
でも、お悩み相談は不定期なコーナーなので、大きなニュースが入るとなくなってしまいます。
遭遇できたら、ラッキー、いえ、ご仏縁でしょう。