聖林寺の十一面観音さまについては、以前から知っていて美しい観音さまだなあと思っていたのですが、残念ながら直接にお参りする機会はありませんでした。
今回、東京の国立博物館にお出ましになると聞いたので、行ってきました。
東京は新型コロナウィルス感染症の流行がまだ、おさまらない2021年6月。
特別展は平成館で行われることが多いのですが今回は、本館の1階、入ってすぐの正面。
以前、お代替りの即位礼正殿の儀の際に使われた御帳台の公開のあった部屋です。
(御帳台の記事は、こちら)
事前予約を平日の午後の遅い時間にしたのですが、入場まちの行列もなく、それほど展示室でも「密」ではありませんでした。
むしろ、ゆったりと観音さまに向い合うことができました。
正面に三輪山の写真パネル。
その下に小さく大神神社の鳥居が見えます。「小さく」って書きましたけど、実際は巨大です。
こんな大きさ。
その写真パネルの前に大神神社の象徴である三ツ鳥居が模してあります。
(実際にはこの三ツ鳥居は、拝殿の奥なのでご祈祷にご昇殿するとチラッと見えたかな、くらいなので拝殿前からは見えないと思います)
その前にいらっしゃるのが十一面観音さまでした。
十一面観音さまの正面から少し離れてみるとちょうど三ツ鳥居の真ん中に三輪山の山頂が重なって、その手前に十一面観音さまのお顔をみあげる配置になっています。
透明で光の反射がないので、ケースの存在は気になりません。
下の古美術雑誌 「目の眼」骨董トーク2021年7月号No.538:十一面観音光の旅のリンク先のyoutubeでは、内部の様子をみることができます。
博物館なのですが、思わず合掌。
展示のそばのショップでは聖林寺のお坊さまが拝観した日を参拝日として日付を入れて、ご朱印をいただけるようになっていました。
普通、博物館の仏像は鑑賞用なので、魂をぬいているとお聞きしたのですが、
なので、もしかしたら日々、この仏様たちのお務めもされているのかもしれません。
本来はお寺の空間で手をあわせてお会いするので、ああこの仏様が木とお香の香りのするお寺にいらしたらどんなんだろうと思うのも楽しい。
でも、ここは博物館。
そして、博物館のよいところは、仏様の周囲をまわってみることができること。
観音さまを横からみると、まっすぐに立っておられるのに重心がやや前に傾いているのがわかります。
衣は軽やかに後ろに流れていて、風を感じます。
上半身がふくっとしていらっしゃる。
肉感的だとむしろ、どっしりという重さがありそうなのですが、むしろ空気を含んだようなふくっとした上半身なので、これもふっと軽やかに前へ上へ動いていくような動きが感じられるのです。
そして軽やかに水瓶をもっていらっしゃるしなやかな手指の様子からも、重力を感じないのです。
(ここは本館正面の階段 テレビドラマとか映画でよく使われています)
そして不勉強ながら初めて知ったのは、聖林寺の観音さまはもともと、三輪神社におられたこと。
私は、聖林寺「の」観音さまだと思っていたのです。
そうだよね、明治以前にあれだけ大きなお宮には必ず、お寺もあったはずだしね。
そして、今回、楽しみだったのはこの寺院が描かれている「三輪山絵図」を直接、見ることができるというのも目的のひとつ。
ああ、この階段はあそこだ、この川は今もあると思いながら、そして、いまは若宮社・大直禰子(おおたたねこ)神社となっているのが、神宮寺の大神寺(鎌倉時代以降は大御輪寺 だいごりんじ)だったそうです。
日光菩薩立像、月光菩薩立像もおられます。
ふわっと上っていく日光菩薩、すっと降りていらっしゃる月光菩薩というしなやかな動きを感じました。
今回はもともと大神寺(鎌倉時代以降は大御輪寺 だいごりんじ)にいらした仏さまがタイトルになっています。
他の仏さまも含めて、神仏分離の以前には同じ大神神社のなかのお寺におられたのです。
でも、今は別々のお寺におられて、これからはこうしてひとつの空間におられることはないのです。
百数十年を経た「同窓会」では、仏さまたちは何をお感じになっていらっしゃるのでしょうか。
この日は、東京は4度目の緊急事態宣言と東京オリンピックに向かうときです。
この新型コロナウィルス感染症の蔓延する東京に、よくお出ましくださいました。
特別展「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」YouTube https://youtu.be/dRhTeOTgwwE
古美術雑誌 「目の眼」骨董トーク2021年7月号No.538:十一面観音光の旅 https://youtu.be/GjQ6woW632I
2021年6月22日(火)~9月12日(日)東京国立博物館